
「おざなり」と「なおざり」は、どちらも「いい加減な対応」を表す言葉として使われますが、実は意味が大きく異なります。
音が似ているため混同しやすく、「どっちを使えばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この2つの言葉の違いは、行動の有無にあります。


正しく使い分けられないと、相手に誤解を与えたり、ビジネスシーンで恥ずかしい思いをしたりする可能性があります。
この記事では、2つの言葉の意味の違い、語源、具体的な使い方と例文、さらに覚えやすい使い分けのコツまで徹底解説します。
最後までご覧ください。
「おざなり」と「なおざり」の意味と違い
「おざなり」と「なおざり」は、どちらも「いい加減な対応」を表す言葉として使われますが、実は意味が大きく異なります。
混同しやすい2つの言葉ですが、正しく使い分けられないと、相手に誤解を与えてしまうこともあります。
ビジネスシーンや日常会話で自信を持って使えるよう、ここでは、両者の意味と決定的な違いを比較表を交えながら解説します。
「おざなり」の意味とは?
「おざなり」とは、いい加減ではあるものの、一応その場では対応しているという意味の言葉です。
漢字では「御座成り」と書き、「その場を取り繕うように適当に済ませる」というニュアンスがあります。
重要なポイントは、何かしらの行動はしているという点です。
ただし、その行動が誠意に欠けていたり、中途半端だったりするため、結果的に不十分な対応になってしまうのが「おざなり」の特徴です。
たとえば、友人が新しく開いたカフェに招待されたとき、興味がないのに「へぇ、いいね」と適当な相槌だけで済ませてしまう場面を想像してみてください。
返事はしているけれど、本気で話を聞いていないこの対応が「おざなりな返事」です。
また、職場でも「おざなり」な対応は見られます。
ある営業担当者の知人が、クレーム対応で「申し訳ございません」と謝罪だけして具体的な改善策を示さなかったところ、お客様から「おざなりな対応だ」と厳しく指摘されたそうです。
形式的には対応しているものの、誠意が感じられない場合に「おざなり」という言葉がぴったり当てはまります。
「なおざり」の意味とは?
「なおざり」とは、放置したまま何もしない、ほったらかしにするという意味の言葉です。
漢字では「等閑」と書き、「おざなり」と決定的に違うのは、行動そのものをしていないという点です。
「なおざり」は、本来やるべきことに手をつけずに放っておく、あるいは最初から無視している状態を指します。
つまり、対応すらしていないのが「なおざり」なのです。
具体例を挙げると、会社の同僚が健康診断の再検査通知を受け取ったのに、忙しさを理由に数ヶ月も放置してしまったケースがあります。
これは「健康管理をなおざりにしている」状態です。
やるべきことをわかっていながら、まったく手をつけていない様子を表しています。
また、趣味で始めたギター練習を最初の1週間だけで飽きてしまい、その後何ヶ月もギターケースすら開けていない、という話もよく聞きます。
これも「練習をなおざりにしている」典型的な例です。
一度も触れずに放置している状態が「なおざり」の本質と言えるでしょう。
2つの決定的な違い【比較表付き】
「おざなり」と「なおざり」の最大の違いは、行動の有無です。以下の比較表で、両者の違いを整理してみましょう。
項目 | おざなり | なおざり |
---|---|---|
意味 | いい加減だが一応対応する | 放置して何もしない |
行動 | ある(中途半端) | ない(放置) |
状態 | その場しのぎの対応 | 完全に無視・放置 |
例 | 適当な相槌を打つ | 返事すらしない |
ニュアンス | 誠意がない、適当 | 無関心、ほったらかし |
簡単に覚えるコツは、「おざなり=一応やる」「なおざり=やらない」と頭に入れておくことです。
さらに具体的な場面で考えてみましょう。
たとえば、上司から資料作成を頼まれたとき、
- おざなり: 急いで適当に作って提出する(形だけは整えるが内容が薄い)
- なおざり: 資料作成自体を忘れて放置する、または後回しにして手をつけない
このように、「おざなり」は質の低い行動をしている状態、「なおざり」は行動自体をしていない状態を指します。
ある企画職の方から聞いた話では、新商品の市場調査を「おざなりに済ませた」結果、競合分析が不十分で上司に差し戻しになったそうです。
一方、調査自体をまったくせずに企画書を出したら「市場調査をなおざりにしている」と指摘されたとのこと。
この違いを理解しておけば、使い分けで迷うことはなくなります。
「おざなり」と「なおざり」の語源・由来
「おざなり」と「なおざり」は、どちらも古くから使われている日本語ですが、それぞれ異なる語源を持っています。
言葉の成り立ちを知ることで、意味の違いがより明確になり、記憶にも定着しやすくなります。
また、語源を理解しておけば、使い分けで迷ったときに「なぜこの言葉を使うのか」を論理的に判断できるようになります。
ここでは、2つの言葉がどのように生まれ、どんな背景があるのかを解説します。
「おざなり」の語源
「おざなり」の語源は、「御座(おざ)+成り(なり)」という言葉の組み合わせから来ています。
「御座」とは、座敷や宴席などの「その場」を意味し、「成り」は「〜のようにする」という意味です。
つまり、「その場その場で取り繕うように適当に対応する」というニュアンスが込められているのです。
江戸時代の遊郭などで、遊女が客をもてなす際に使われた言葉だと言われています。
本心からではなく、その場限りの表面的な対応をする様子を「おざなり」と表現していたそうです。
この時代背景から、「形だけは整えるが誠意がない」という現代の意味につながっていきました。
ある国語教師の友人が、授業で「おざなりの語源」を説明したところ、生徒たちが「『その場成り』だから、その場しのぎの対応なんだ!」と納得してくれたそうです。
語源を知ることで、言葉のイメージがグッと掴みやすくなるという好例です。
また、別の説として「お座敷+なり(様子)」が変化したという見方もあります。
お座敷で形式的におもてなしをする様子から、「表面的で中身のない対応」を指すようになったという解釈です。
いずれにしても、「その場だけの適当な対応」という核となる意味は変わりません。
ちなみに、会社の先輩が取引先との打ち合わせで「おざなりな返答」をしてしまい、後から上司に「語源を知っていれば、その場しのぎの発言がどれだけマズいか分かるはずだ」と叱られたという話を聞いたことがあります。
語源を理解していれば、ビジネスシーンでの使い方にも自然と注意が向くようになるでしょう。
「なおざり」の語源
「なおざり」の語源は、「直(なお)+さり(去り)」または「等(など)+座(ざ)+り」から来ていると考えられています。
「直さり」は「そのまま放置する」、「等閑(とうかん)」は「平等に扱わず無視する」という意味があり、どちらの説でも「何もせずに放っておく」という共通点があります。
古語では「なほざり」と表記され、平安時代の文学作品にも登場する古い言葉です。
『源氏物語』などの古典文学にも使われており、「気にかけない」「放っておく」という意味で用いられていました。
時代を経て現代でも「放置する」「ほったらかしにする」という意味で使われ続けています。
興味深いのは、「等閑(とうかん)」という漢字表記です。
「等しく閑(ひま)にする」、つまり「すべて同じように何もしない」という意味から、「なおざり」の当て字として使われるようになりました。
この漢字を知っている人は少ないですが、覚えておくと教養がある印象を与えられます。
知人の編集者が、原稿のチェックを後回しにして締め切り直前まで「なおざり」にしていたところ、語源を調べて「『直(なお)+去り(さり)』だから、直接向き合わずに去っていく=放置する、という意味なんだ!」と気づき、反省したそうです。
それ以降、仕事を放置しないよう心がけるようになったとのこと。
語源を知ることで、言葉の重みが実感できた良い例です。
また、大学時代の友人が卒論を「なおざり」にして遊び呆けていたとき、指導教官から「なおざりの語源は『そのまま去る』だぞ。
このままだと本当に卒業が去っていくぞ」と皮肉を言われ、慌てて取り組み始めたという笑い話もあります。
語源を知っていると、言葉の持つ警告の意味も理解しやすくなるのです。
「おざなり」の正しい使い方と例文
「おざなり」は、いい加減で誠意のない対応をする様子を表す言葉です。
ビジネスシーンではもちろん、日常会話でも使える便利な表現ですが、使い方を間違えると相手に誤解を与えてしまう可能性があります。
この言葉は基本的に批判的なニュアンスを含むため、使う場面や相手を選ぶ必要があります。
ここでは、日常会話とビジネスシーンでの具体的な使い方を紹介し、さらに実践的な例文を5つ挙げて解説します。
日常会話での使い方
日常会話で「おざなり」を使う場合、主に誰かの対応や態度を批判するときに用いられます。
友人同士の会話や家族との会話で、「ちゃんとやってほしいのに適当にされた」という不満を表現するときに便利な言葉です。
ただし、直接的な批判になるため、使う相手やタイミングには注意が必要です。
たとえば、友人に対して面と向かって「あなたの返事はおざなりだ」と言ってしまうと、関係がギクシャクする恐れがあります。
むしろ、第三者の行動について語るときや、自分自身の反省として使う方が自然です。
具体的な使用例を見てみましょう。
友人が「最近、彼氏が私の話を真剣に聞いてくれなくて、おざなりな相槌ばかりなの」と愚痴をこぼしていました。
これは、彼氏が話を聞いてはいるものの、上の空で適当に「うん、うん」と返事をしている状況を表しています。
形だけは聞いている姿勢を見せているが、誠意がないという「おざなり」の典型例です。
また、家族との会話でも使えます。
「子どもの宿題チェックをおざなりにしていたら、学校から連絡が来てしまった」という母親の話を聞いたことがあります。
この場合、宿題を見てはいるものの、ざっと目を通すだけで内容まで確認していなかったという状況です。
一応はチェックしているけれど、中途半端な対応だったことを反省する文脈で使われています。
さらに、自分の行動を振り返るときにも使えます。
「最近、友達からのLINEにおざなりな返事ばかりしてしまっている」と反省する場面では、スタンプだけで済ませたり、「了解」の一言だけで返したりする自分の態度を客観視できます。
日常会話では、否定的な評価を含む言葉であることを意識し、相手を傷つけないよう配慮しながら使うのがポイントです。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンで「おざなり」を使う場合は、さらに慎重さが求められます。
この言葉は批判的なニュアンスが強いため、上司や取引先に対して直接使うのは避けるべきです。
主に、自分の反省や社内での問題点の指摘、改善提案などで使われます。
たとえば、会議で「今回のプロジェクトでは顧客対応がおざなりになってしまった点を反省しています」と発言する場合、自分たちのチームの対応が不十分だったことを認める文脈で使います。
この使い方なら、問題点を明確にしながら改善の意思も示せるため、建設的な印象を与えられます。
ある営業職の知人が、クライアントへの報告書を急いで作成したところ、上司から「内容がおざなりだ。もう一度作り直してください」と指摘されたそうです。
この場合、報告書自体は提出しているものの、データ分析が浅かったり、誤字脱字が多かったりと、誠意が感じられない仕上がりだったことを意味します。
上司が部下の仕事を評価する際に「おざなり」という言葉を使うことはありますが、言われた側は真摯に受け止める必要があります。
また、業務改善の提案書でも使えます。
「現状、新人教育がおざなりになっており、離職率が高まっています」という書き方なら、問題点を具体的に指摘しつつ、改善の必要性を訴えられます。
このように、問題提起や改善提案の文脈で使うと効果的です。
一方、取引先やお客様に対して使う場合は要注意です。
「お客様への対応がおざなりだった」と自社の問題を認める場合は問題ありませんが、「御社の対応がおざなりだ」などと相手を批判する表現は、関係悪化につながるため避けましょう。
ビジネスシーンでは、「おざなり」を使うことで問題意識を共有し、改善に向けた議論を促す役割が期待できます。
ただし、使い方を誤ると人間関係にヒビが入る可能性もあるため、慎重に判断することが大切です。
「おざなり」を使った例文5選
実際に「おざなり」を使った例文を5つ紹介します。
それぞれの例文で、どのような状況を表しているのかも合わせて解説します。
例文①:日常生活での使用
「彼は私の相談におざなりな返事しかしてくれなかった。」
→ 相談に対して真剣に向き合わず、「そうなんだ」「大変だね」などの表面的な相槌だけで済ませている様子を表しています。
一応返事はしているものの、本気で考えてくれていないと感じる場面です。
例文②:仕事での反省
「今月は他の案件に追われて、既存顧客へのフォローがおざなりになってしまった。」
→ フォローの電話やメールは送っているものの、形式的な内容だけで、相手のニーズに寄り添った対応ができていなかったことを反省している表現です。
行動はしているが、質が伴っていない状態です。
例文③:自己反省
「ダイエット中なのに、食事管理がおざなりになり、結局リバウンドしてしまった。」
→ カロリー計算や食事記録をつけてはいるものの、適当に済ませていたり、記録を忘れたりして、中途半端な管理になっていた状況を表しています。
完全に放置したわけではないが、いい加減だったという意味です。
例文④:教育現場での指摘
「宿題のチェックをおざなりにしていたら、子どもの理解度が把握できなくなっていた。」
→ 宿題に目を通してはいるものの、丸つけだけで終わらせたり、間違いを詳しく確認しなかったりと、表面的なチェックに留まっていた状況です。
形だけの確認では不十分だったという反省が込められています。
例文⑤:批判的な指摘
「あの店員の接客はおざなりで、二度と行きたくないと思った。」
→ 接客自体はしているものの、笑顔がなかったり、説明が雑だったり、やる気が感じられなかったりする様子を批判しています。
最低限の対応はしているが、サービス精神が欠けている状態を表現しています。
これらの例文から分かるように、「おざなり」は何かしらの行動はしているが、その質が低く、誠意が感じられない状況を表す言葉です。
日常生活からビジネスシーンまで幅広く使えますが、批判的なニュアンスを含むため、使う場面と相手を選ぶことが重要です。
「なおざり」の正しい使い方と例文
「なおざり」は、本来やるべきことを放置したまま何もしない状態を表す言葉です。
「おざなり」と違い、行動そのものをしていない点が特徴で、より深刻な怠慢や無関心を指します。
使い方を間違えると意味が通じなくなるため、正確な理解が必要です。
また、自分の行動を反省する際にも、相手を批判する際にも使える表現ですが、場面に応じた使い分けが求められます。
ここでは、日常会話とビジネスシーンでの使い方、そして実践的な例文を紹介します。
日常会話での使い方
日常会話で「なおざり」を使う場合、やるべきことを放置している状態を表現するときに用いられます。
「おざなり」よりも放置の度合いが強く、「まったく手をつけていない」「完全に忘れている」といった状況で使われることが多い言葉です。
友人同士の会話では、自分の怠慢を反省する文脈でよく登場します。
たとえば、「最近、英会話の勉強をなおざりにしてしまって、全然上達しない」という使い方があります。
この場合、英会話の勉強をする時間を作らず、教材を開くこともせず、完全に放置している状態を表しています。
ある友人が、趣味で始めたジョギングを「なおざりにしている」と話していました。
最初の1週間は張り切って走っていたものの、その後は忙しさを理由にランニングシューズすら履かなくなり、3ヶ月も放置していたそうです。
これは「行動自体をしていない」という「なおざり」の典型例です。
もし「ジョギングをおざなりにしている」と言ってしまうと、「適当に走っている」という意味になり、実態と異なってしまいます。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンで「なおざり」を使う場合は、業務の放置や優先順位の低下を指摘するときに効果的です。
「おざなり」が「質の低い対応」を指すのに対し、「なおざり」は「対応自体がない」ことを意味するため、より重大な問題を表現できます。
会議や報告書では、問題点を明確にするために使われます。
「新規顧客獲得に注力するあまり、既存顧客のフォローをなおざりにしてしまった」という表現は、既存顧客への連絡や訪問を一切しなかった、または大幅に減らしてしまった状況を表しています。
ある営業マネージャーの知人が、チームの営業成績が落ちた原因を分析した際、「日報のチェックをなおざりにしていたため、メンバーの進捗状況を把握できていなかった」と反省していました。
日報は毎日提出されていたものの、マネージャーがまったく目を通さず、承認だけしていた状況です。
これは「行動していない」という「なおざり」の典型です。
もし「日報のチェックをおざなりにしていた」と言えば、「ざっと目を通すだけで終わらせていた」という意味になり、微妙にニュアンスが変わります。
「なおざり」を使った例文5選
実際に「なおざり」を使った例文を5つ紹介します。
それぞれの例文で、どのような放置状態を表しているのかも解説します。
例文①:健康管理
「忙しさを理由に、健康診断の再検査をなおざりにしていたら、病気が進行してしまった。」
→ 再検査の通知を受け取っていたにもかかわらず、病院に行く予約もせず、完全に放置していた状況を表しています。
例文②:仕事の優先順位
「大型案件に集中するあまり、小口顧客への対応をなおざりにしてしまい、クレームが増えた。」
→ 小口顧客からの問い合わせに返信しなかったり、訪問を何ヶ月もしなかったりと、対応自体をほとんどしていなかった状況です。
例文③:家事の放置
「在宅勤務中、掃除をなおざりにしていたら、部屋がゴミ屋敷のようになってしまった。」
→ 掃除機をかけることも、片付けることもせず、何週間も何もしていなかった状況を表しています。
例文④:人間関係の放置
「仕事が忙しくて、友人との付き合いをなおざりにしていたら、いつの間にか疎遠になっていた。」
→ 友人からの連絡に返信しなかったり、誘いを断り続けたりと、関係の維持を完全に放棄していた状況です。
例文⑤:学習の放置
「資格試験の勉強をなおざりにしたまま試験日を迎えてしまい、当然のように不合格だった。」
→ 教材を開くこともせず、問題集に手をつけることもなく、勉強時間をまったく確保していなかった状況を表しています。
間違えやすい場面と正しい使い分け
「おざなり」と「なおざり」は、音が似ているだけでなく、どちらも「いい加減な対応」を表す言葉であるため、実際の会話や文章で使い分けに迷うことが多くあります。
特に、中途半端な対応なのか完全な放置なのか、境界線が曖昧なケースでは判断に困るでしょう。
しかし、いくつかのポイントを押さえておけば、迷わず正しく使い分けられるようになります。
ここでは、どちらを使うか迷う具体的な場面を取り上げ、さらに覚えやすい使い分けのコツを紹介します。
どちらを使うか迷う具体的な場面
実際の生活やビジネスシーンでは、「おざなり」と「なおざり」のどちらを使うべきか迷う場面がいくつかあります。
ここでは、判断に迷いやすい具体的なケースを紹介し、正しい使い分けを解説します。
場面①:メールの返信が遅い・適当な場合
上司からのメールに「了解です」とだけ返信した場合、これは「おざなり」でしょうか、それとも「なおざり」でしょうか?
答えは「おざなり」です。
返信という行動はしているものの、内容が薄く誠意が感じられないため「おざなりな返信」と表現できます。
一方、メールを読んだまま返信しなかった場合は「なおざり」になります。
場面②:掃除を軽くしかしない場合
部屋の掃除をするとき、掃除機をかけずに、目に見えるゴミだけをサッと拾って終わらせた場合はどうでしょうか?
これは「おざなり」です。掃除という行動はしているものの、不十分だからです。
もし何週間も掃除をまったくしていない場合は「なおざり」になります。
ある会社員の友人が、在宅勤務中に「部屋の掃除をおざなりにしている」と言っていましたが、実際は週に一度も掃除していませんでした。
この場合、正しくは「掃除をなおざりにしている」と表現すべきです。
「おざなり」と言うと、「適当に掃除はしている」という意味になってしまいます。
場面③:資料作成を後回しにしている場合
締め切りが迫っているのに資料作成に手をつけていない場合、これは「なおざり」です。
しかし、資料を作り始めたものの、データ分析が浅く、グラフも適当に作った場合は「おざなり」になります。
行動の有無が判断基準です。
場面④:健康管理の場合
「食事管理をおざなりにしている」という表現は、カロリー計算はしているものの適当に済ませている状態を指します。
一方、「食事管理をなおざりにしている」は、カロリー計算自体をまったくしていない状態です。
ある栄養士の知人が、クライアントの状況を把握する際、この違いを意識して質問するそうです。
「記録はつけているが適当か」「記録自体をつけていないか」で、指導内容が大きく変わるからです。
判断のポイント
迷ったときは、「その行動を少しでもしているか?」を基準に考えましょう。
少しでもしていれば「おざなり」、まったくしていなければ「なおざり」です。
覚えやすい使い分けのコツ
「おざなり」と「なおざり」を確実に使い分けるために、いくつかの覚え方を紹介します。
これらのコツを覚えておけば、とっさの場面でも間違えることはありません。
コツ①:「ある」と「ない」で覚える
最もシンプルな覚え方は、「おざなり=行動がある」「なおざり=行動がない」です。
「おざなり」の「お」を「ある」の「あ」、「なおざり」の「な」を「ない」の「な」と結びつけて覚えると効果的です。
ある大学生が、この方法でテスト前に覚えたところ、一度も間違えなくなったそうです。
コツ②:語源から連想する
「おざなり」は「御座成り(その場しのぎ)」なので、「その場では対応している=行動している」と覚えます。
「なおざり」は「直去り(そのまま去る)」なので、「向き合わずに去る=放置する」と覚えましょう。
語源を知ることで、言葉の本質的な意味が理解でき、迷いがなくなります。
コツ③:「適当」と「放置」で区別
「おざなり=適当にやる」「なおざり=放置してやらない」というシンプルな対比で覚えるのも効果的です。
ビジネス文書を書く際にこの基準で判断すれば、ほぼ間違えません。
コツ④:例文で体感する
「宿題をおざなりにした」
→ 適当に終わらせた
「宿題をなおざりにした」
→ やらずに放置した
このように、同じ文脈で両方を使ってみることで、違いが体感できます。
ある編集者の知人が、原稿チェックの際に「この表現は『おざなり』と『なおざり』のどちらが正しいか?」と常に自問する習慣をつけたところ、自然と使い分けられるようになったそうです。
意識的に考える癖をつけることが、正確な使い分けへの近道です。
実践練習
次の空欄に「おざなり」か「なおざり」を入れてみましょう。
・「彼は私の話を〇〇に聞き流した」
→「おざなり」(一応聞いてはいる)
・「彼は私の話を〇〇にして無視した」
→「なおざり」(聞いてもいない)
このように、実際の文で練習することで、使い分けが定着します。
「おざなり」「なおざり」の類語・言い換え表現
「おざなり」と「なおざり」には、それぞれ似た意味を持つ類語や言い換え表現が存在します。
類語を知っておくことで、文章の表現力が豊かになり、同じ言葉の繰り返しを避けることができます。
また、ビジネス文書やフォーマルな場面では、より適切な言い回しを選ぶことで、相手に与える印象をコントロールすることも可能です。
場面に応じて使い分けられるよう、ここでは、「おざなり」と「なおざり」それぞれの類語と、具体的な使用例を解説します。
「おざなり」の類語
「おざなり」の類語には、「いい加減な対応」を表す様々な表現があります。
それぞれ微妙にニュアンスが異なるため、状況に応じて使い分けることが大切です。
主な類語と意味
- 適当(てきとう):
真剣に取り組まず、その場しのぎの対応をすること。
「適当な返事」「適当に済ませる」など、日常会話で最もよく使われる表現です。 - いい加減(いいかげん):
誠実さに欠け、中途半端な対応をすること。
「いい加減な仕事」「いい加減な態度」など、批判的なニュアンスが強い言葉です。 - 杜撰(ずさん):
細かい配慮がなく、雑な対応をすること。
ビジネスシーンでよく使われ、「杜撰な管理」「杜撰な対応」などの形で用いられます。 - 生半可(なまはんか):
中途半端で不十分な様子。
「生半可な知識」「生半可な態度」など、やや古風な表現ですが、文章では効果的です。 - その場しのぎ:
目の前の問題だけを取り繕う対応。
「その場しのぎの解決策」など、根本的な解決になっていない様子を表します。
使い分けの例
ある広報担当の友人が、プレスリリースを急いで作成した際、上司から「内容が杜撰だ」と指摘されたそうです。
「おざなり」でも意味は通じますが、ビジネス文書では「杜撰」の方がフォーマルで適切な表現になります。
逆に、日常会話では「適当」や「いい加減」の方が自然です。
また、別の知人が恋人との記念日に「適当なプレゼント」を渡してしまい、喧嘩になったという話を聞きました。
この場合、「おざなりなプレゼント」と言い換えることもできますが、「適当」の方が日常的で使いやすい表現です。
場面別の言い換え例
- ビジネスメール:
「おざなりな対応」→「不十分な対応」「配慮に欠ける対応」 - 報告書:
「おざなりな管理」→「杜撰な管理」「適切でない管理」 - 日常会話:
「おざなりな返事」→「適当な返事」「いい加減な返事」
類語を使い分けることで、相手に与える印象を調整できます。
特にビジネスシーンでは、「おざなり」という直接的な表現を避け、より穏当な言い回しを選ぶことで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
「なおざり」の類語
「なおざり」の類語には、「放置する」「無視する」といった、行動しないことを表す表現が多くあります。
それぞれのニュアンスを理解して使い分けることで、より正確に状況を伝えられます。
主な類語と意味
- おろそか:
やるべきことをいい加減にする、疎かにすること。
「健康管理をおろそかにする」など、「なおざり」と非常に近い意味で使われます。 - 放置(ほうち):
何もせずにそのままにしておくこと。
「問題を放置する」「仕事を放置する」など、ストレートで分かりやすい表現です。 - ほったらかし:
何も手をつけずに放っておくこと。
口語的でカジュアルな表現なので、日常会話向きです。 - 疎か(おろそか):
注意や配慮が足りず、軽んじること。
「家族を疎かにする」「本業を疎かにする」など、やや文語的な表現です。 - 後回し:
優先順位を下げて、あとでやろうとすること。
完全に放置するわけではないが、実質的に手がつけられていない状態を指します。
使い分けの例
ある営業職の知人が、既存顧客のフォローを「後回しにしていた」と反省していました。
完全に放置したわけではないものの、新規開拓を優先するあまり、既存顧客への連絡がほとんどできていなかったそうです。
この場合、「なおざりにしていた」とも言えますが、「後回しにしていた」の方が状況を正確に表現できます。
また、友人が部屋の片付けを「ほったらかしにしている」と話していました。
これは「なおざりにしている」と同じ意味ですが、日常会話では「ほったらかし」の方が親しみやすく、自然に聞こえます。
場面別の言い換え例
- ビジネス文書:
「なおざりにする」
→「放置する」「疎かにする」 - 報告書:
「メンテナンスをなおざりにした」
→「メンテナンスを怠った」「適切な管理を行わなかった」 - 日常会話:
「勉強をなおざりにする」
→「勉強をほったらかしにする」「勉強を後回しにする」
ある人事担当の方から聞いた話では、社員の健康管理を「おろそかにしていた」結果、メンタルヘルス不調者が増えたそうです。
社内報告書では「おろそか」という表現を使いましたが、役員会議では「適切な管理体制を構築できていなかった」という、より客観的で責任を明確にする表現に変えたとのことです。
このように、類語を知っておくことで、相手や場面に応じた最適な表現を選べるようになります。
「おざなり」と「なおざり」に関するよくある質問
「おざなり」と「なおざり」について、よくある疑問や質問をQ&A形式でまとめました。
実際の使用場面で迷いやすいポイントや、知っておくと役立つ豆知識を取り上げています。
ビジネスシーンでの適切な使い方、目上の人への配慮、漢字表記の有無など、実践的な内容を網羅しています。
ここでは、読者の皆さんが抱きやすい5つの疑問について、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
ビジネスメールではどちらを使うべき?
ビジネスメールで「おざなり」や「なおざり」を使う場合、状況に応じた適切な判断が必要です。
基本的には、どちらの言葉も批判的なニュアンスを含むため、使う相手や文脈に十分な配慮が求められます。
自分や自社の反省として使う場合
自分の対応や自社の問題点を認める文脈であれば、両方とも使用できます。
たとえば、「弊社の対応がおざなりで申し訳ございませんでした」や「日頃のご連絡をなおざりにしてしまい、お詫び申し上げます」といった表現は、誠意を示す謝罪文として適切です。
ある営業担当の知人が、顧客からのクレームに対して「ご報告が遅れ、おざなりな対応となってしまいましたこと、深くお詫び申し上げます」とメールで謝罪したところ、顧客から「誠意が伝わった」と評価されたそうです。
このように、自己批判の文脈では効果的に使えます。
取引先や上司には直接使わない
一方、相手の対応を批判する際には絶対に使わないでください。
「御社の対応はおざなりだ」などと書いてしまうと、関係が悪化します。
もし相手の対応に不満がある場合は、「もう少し詳細なご説明をいただけますと幸いです」など、婉曲的な表現を選びましょう。
より適切な言い換え表現
ビジネスメールでは、「おざなり」「なおざり」よりも、「不十分」「配慮が足りず」「適切な対応ができず」などの表現の方がフォーマルで無難です。
特に、取引先への謝罪メールでは、直接的すぎる表現を避け、丁寧な言い回しを心がけましょう。
「おざなりにする」と「なおざりにする」はどう違う?
「おざなりにする」と「なおざりにする」は、動詞化した表現ですが、意味の違いは名詞形と同じです。
行動の有無で判断しましょう。
「おざなりにする」の意味
いい加減で誠意のない対応をすることを指します。
何かしらの行動はしているものの、その質が低く、中途半端な状態です。
たとえば、「会議の議事録作成をおざなりにする」という場合、議事録は作っているが、内容が薄く、重要なポイントが抜けているといった状況を表します。
ある企画職の方が、上司から「プレゼン資料の作成をおざなりにしないように」と注意されたそうです。
これは、「適当に作るのではなく、しっかり作り込みなさい」という意味です。
行動自体は求められているが、その質を高めるよう促されているのです。
「なおざりにする」の意味
本来やるべきことを放置して、何もしないことを指します。
行動自体がない状態です。
たとえば、「顧客へのお礼メールをなおざりにする」という場合、メールを送ること自体をせず、完全に忘れているか後回しにしている状況を表します。
知人の経理担当者が、経費精算の承認を「なおざりにしていた」結果、社員から不満が出たという話を聞きました。
承認作業を何日も放置していたため、社員の経費が支払われず、トラブルになったそうです。
これは「行動していない」という典型的な「なおざり」の使い方です。
使い分けの実例
・「健康管理をおざなりにする」
→ 健康診断は受けるが、結果を真剣に見ない
・「健康管理をなおざりにする」
→ 健康診断自体を受けない、または結果を全く見ない
このように、動詞化しても基本的な違いは変わりません。
「一応やるがいい加減」なら「おざなり」、「やらない・放置」なら「なおざり」と覚えておきましょう。
目上の人に使っても失礼にならない?
「おざなり」と「なおざり」は、基本的に批判的なニュアンスを含む言葉なので、目上の人に対して使う際には細心の注意が必要です。
使い方を誤ると、失礼な印象を与えたり、人間関係にヒビが入ったりする可能性があります。
目上の人を批判する場合は絶対NG
上司や先輩、取引先の方に対して、「あなたの対応はおざなりだ」「部長はこの案件をなおざりにしている」などと言うのは、極めて失礼です。
たとえ事実であっても、直接的な批判は避けるべきです。
もし指摘する必要がある場合は、「もう少し詳しくご検討いただけますでしょうか」「こちらの件、再度ご確認いただけると幸いです」など、遠回しで丁寧な表現を選びましょう。
自分の反省として使う場合は問題ない
自分の行動を反省する文脈であれば、目上の人の前でも使えます。
たとえば、上司への報告で「私の対応がおざなりで申し訳ございませんでした」「日々の報告をなおざりにしてしまい、反省しております」といった使い方は適切です。
ある新入社員が、提出書類に不備があった際、上司に「確認作業をおざなりにしてしまいました。今後は細心の注意を払います」と謝罪したところ、上司から「問題を認識できているなら大丈夫だ」と言われたそうです。
自己批判として使う分には、むしろ誠実な印象を与えられます。
より安全な表現
目上の人とのコミュニケーションでは、「おざなり」「なおざり」よりも、「不十分でした」「配慮が足りませんでした」「適切に対応できませんでした」といった、より丁寧で客観的な表現を選ぶ方が無難です。
特にフォーマルな場面では、言葉選びに慎重になりましょう。
漢字表記はある?
「おざなり」と「なおざり」には、それぞれ漢字表記が存在しますが、現代ではほとんどひらがなで表記されます。
漢字を知っておくと、言葉の成り立ちや意味がより深く理解できるため、教養として覚えておくと役立ちます。
「おざなり」の漢字表記
「おざなり」は漢字で「御座成り」または「御座形」と書きます。
「御座(おざ)」は座敷や宴席などの「その場」を意味し、「成り(なり)」は「〜のようにする」という意味です。
つまり、「その場その場で取り繕う様子」を表しています。
ただし、この漢字表記は現代ではほとんど使われません。
ビジネス文書や一般的な文章では、ひらがなで「おざなり」と書くのが標準です。
漢字で書くと、かえって読みにくく、古風すぎる印象を与える可能性があります。
ある編集者の友人が、小説の原稿で「御座成り」という漢字表記を見つけ、「時代小説なら問題ないが、現代小説では違和感がある」と指摘したそうです。
漢字表記は知識として知っておくだけで十分でしょう。
「なおざり」の漢字表記
「なおざり」は漢字で「等閑」と書きます。
「等(など)」は「等しく」、「閑(かん)」は「何もしない・ひま」を意味し、「すべて同じように何もしない=放置する」という意味になります。
「等閑」という表記は、やや難解で、読める人は少ないでしょう。
そのため、現代ではひらがなで「なおざり」と書くのが一般的です。
ただし、文学作品や格調高い文章では、あえて漢字表記を使うこともあります。
実用上の注意点
ビジネスメールや報告書、日常的な文章では、必ずひらがなで「おざなり」「なおざり」と表記しましょう。
漢字で書くと、読みにくいだけでなく、わざとらしい印象を与えてしまう可能性があります。
漢字表記は、教養として知っておくだけで実用上は十分です。
2つを混同しないための覚え方は?
「おざなり」と「なおざり」は音が似ているため、混同しやすい言葉です。
しかし、いくつかの覚え方を実践すれば、確実に使い分けられるようになります。
ここでは、効果的な覚え方を紹介します。
覚え方①:「ある」と「ない」で覚える
最もシンプルで効果的な方法は、「おざなり=行動がある」「なおざり=行動がない」と覚えることです。
「おざなり」の「お」を「ある」の「あ」に、「なおざり」の「な」を「ない」の「な」に結びつけると、覚えやすくなります。
ある予備校講師が、この覚え方を生徒に教えたところ、正答率が劇的に上がったそうです。
シンプルなゴロ合わせは、記憶に定着しやすいのです。
覚え方②:具体例で体感する
「宿題をおざなりにした」
→ 適当に終わらせた(やってはいる)
「宿題をなおざりにした」
→ やらずに放置した(やっていない)
このように、同じ文脈で両方を使い比べることで、違いが体感できます。
日常生活の中で、自分の行動を「おざなり」か「なおざり」かで分類する練習をすると、自然と身につきます。
覚え方③:語源から理解する
「おざなり」は「御座成り(その場しのぎ)」なので、その場では対応している=行動している。
「なおざり」は「直去り(そのまま去る)」なので、向き合わずに去る=放置する。
語源を知ることで、本質的な意味が理解できます。
覚え方④:「適当」と「放置」で区別
「おざなり=適当にやる」「なおざり=放置してやらない」というシンプルな対比で覚えるのも効果的です。
どちらの言葉を使うか迷ったとき、「適当にでもやったか?」「完全に放置したか?」を自問すれば、正しい言葉が選べます。
ある会社員の方が、この覚え方を実践してから、メールや報告書で一度も間違えなくなったそうです。
意識的に判断する習慣をつけることが、正確な使い分けへの最短ルートです。
まとめ
「おざなり」と「なおざり」は、どちらも「いい加減な対応」を表す言葉ですが、決定的な違いは行動の有無にあります。
「おざなり」は、いい加減ではあるものの一応対応している状態を指し、「なおざり」は、何もせずに放置している状態を指します。
覚え方のコツは、「おざなり=一応やる」「なおざり=やらない」とシンプルに覚えることです。
ビジネスシーンや日常会話で正しく使い分けることで、自分の意図を正確に伝えられるだけでなく、言葉に対する信頼感も高まります。
特に、自己反省や問題提起の場面では、適切な言葉選びが重要です。
この記事で学んだ違いや例文を参考に、ぜひ実際の会話や文章で使ってみてください。
正しい日本語を使いこなすことで、あなたのコミュニケーション力は確実に向上するでしょう。