
「主幹」と「主管」は、どちらも「しゅかん」と読むため混同しやすい言葉です。
ビジネス文書や会議で使う機会があっても、「どちらが役職なのか」「どう使い分けるのか」と迷ったことはありませんか?
実は、主幹は全体を統括する役職を指し、主管は特定業務を担当する関係を示すという明確な違いがあります。
この記事では、主幹と主管の基本的な意味の違いから、公務員と民間企業での使われ方、具体的な使い分けのポイントまで、実例を交えながらわかりやすく解説します。
名刺への記載方法や英語表現など、実務で役立つ情報も満載です。
この記事を読めば、もう迷うことはありません。
ぜひ最後までご覧ください。
「主幹」と「主管」の違い
「主幹」と「主管」は、どちらも「しゅかん」と読み、ビジネスシーンや公的機関でよく使われる言葉です。
しかし、この2つには明確な違いがあります。
簡単に言えば、主幹は「全体をまとめる中心的な役割」を指し、主管は「特定の業務を責任を持って管理する役割」を指します。
ここでは、役割・責任範囲・使われる場面という3つの視点から、違いを詳しく解説します。
役割の違い:全体統括か実務管理か
主幹と主管の最も大きな違いは、担う役割の範囲にあります。
🔵 主幹の役割
- プロジェクトや組織全体を横断的に統括する
- 複数の部署や担当者をまとめ、方向性を示す
- 全体の調整役として機能する
たとえば、会社で新商品開発プロジェクトを立ち上げる際、開発部門・営業部門・マーケティング部門など複数の部署が関わります。
このとき、各部署の動きを統括し、プロジェクト全体を前に進めるのが「主幹」の役割です。
🟢 主管の役割
- 特定の業務や分野に対して責任を持って管理する
- 実務レベルでの意思決定や進行管理を行う
- 担当範囲内での実行責任を負う
同じ新商品開発プロジェクトでも、「広告キャンペーンの企画・実行」という具体的な業務を責任を持って管理するのが「主管」の役割です。
知人の広告代理店勤務の方が、「自社が主管となってキャンペーンを運営した」と話していましたが、これはまさに特定業務の実務管理を担当したケースです。
責任範囲の違い:横断的か特定分野か
主幹と主管では、責任を負う範囲も異なります。
比較項目 | 主幹 | 主管 |
---|---|---|
責任範囲 | 横断的・全体的 | 特定分野・限定的 |
関わる人数 | 多数の部署や担当者 | 特定のチームや部署 |
意思決定 | 方針や戦略レベル | 実務や実行レベル |
調整業務 | 組織間の調整が中心 | 担当業務内の調整が中心 |
主幹は「森全体を見る」役割であり、プロジェクトや事業全体の成否に責任を持ちます。
一方、主管は「木を見る」役割で、担当する具体的な業務の成果に責任を持ちます。
地方自治体に勤める友人の話では、大型イベントの実施にあたって、「主幹部署が全体の企画・調整を担当し、各主管部署が広報・会場設営・受付などの実務を分担した」とのこと。
このように、主幹が大枠を描き、主管が実行を担うという関係性が見えてきます。
使われる場面の違い
主幹と主管は、使われる場面や文脈も異なります。
🔵 主幹が使われる場面
- 「編集主幹」(出版社で編集方針を統括)
- 「プロジェクト主幹」(複数部署にまたがるプロジェクトの責任者)
- 「主幹教諭」(学校で教育活動全体を調整する役職)
🟢 主管が使われる場面
- 「主管部署」(特定業務を担当する部署)
- 「主管者」(ある業務の責任者)
- 「主管事業」(組織が主体となって管理する事業)
たとえば、行政の文書では「○○課が主管する事業」という表現をよく見かけます。
これは、その課が責任を持って管理・運営する事業であることを示しています。
一方、「主幹が各部署を調整して進める」という表現は、全体を統括する立場を示しています。
会社員の同僚から聞いた話ですが、社内プロジェクトで「主幹は部長、主管は各チームリーダー」という役割分担になったとのこと。
部長が全体の方向性を決め、各リーダーが実務を進めるという明確な棲み分けができていたそうです。
【ここがポイント!】
✓ 主幹 = 全体をまとめる中心的な役割(横断的・統括的)
✓ 主管 = 特定の業務を責任を持って管理する役割(限定的・実務的)
✓ 主幹は「森全体を見る」、主管は「木を見る」イメージ
「主幹」と「主管」の基本的な意味とは?
違いを理解したところで、それぞれの言葉の意味をより深く見ていきましょう。
「主幹」と「主管」は、どちらも漢字の組み合わせから意味を推測できる言葉ですが、語源や成り立ちを知ることで、使い分けがより明確になります。
ここでは、主幹の意味と語源、主管の意味と語源、そして2つの言葉が生まれた背景を解説します。
主幹の意味と語源
「主幹」は、「主」(中心となる・メインの)と「幹」(木の幹・中心となる部分)を組み合わせた言葉です。
📖 主幹の意味
- 物事の中心となって全体をまとめる役割
- 組織やプロジェクトの中核を担う人や部署
- 複数の要素を統括する立場
「幹」という漢字には、木の中心部分という意味があります。
木の幹は枝葉を支える土台であり、全体を支える重要な部分です。
そこから転じて、「主幹」は組織やプロジェクトの中心軸として全体を支える役割を指すようになりました。
使用例:
- 編集主幹が雑誌全体の方針を決定する
- プロジェクト主幹として各部署の調整を行う
- 主幹教諭が学校運営の中心的な役割を担う
もともと「主幹」は植物学の用語でもあり、木の中心となる太い幹を指していました。
この「中心」「全体を支える」というイメージが、ビジネスや組織の用語として応用されるようになったのです。
主管の意味と語源
「主管」は、「主」(主体的に・中心となって)と「管」(管理する・つかさどる)を組み合わせた言葉です。
📖 主管の意味
- 特定の業務や分野を主体的に管理すること
- ある事柄について責任を持って取り仕切ること
- 担当範囲内での管理・運営を行う立場
「管」という漢字には、「管理する」「つかさどる」という意味があります。
つまり「主管」は、ある特定の業務や分野について、主体的に管理・運営することを指します。
使用例:
- 総務部が主管する社内イベント
- 主管部署として予算を管理する
- 主管者が責任を持って業務を進める
行政機関や企業では、「どの部署が主管するか」という表現がよく使われます。
これは「どの部署が責任を持って管理・運営するか」を明確にするためです。
友人が市役所に勤めていますが、「この事業はうちの課が主管だから、他部署との調整も含めて全部うちが責任を持つ」と話していました。
2つの言葉が生まれた背景
主幹と主管は、どちらも組織運営を円滑にするために生まれた言葉です。
🔵 主幹が必要になった背景
組織が大きくなり、複数の部署やプロジェクトが同時並行で動くようになると、「全体を見渡して調整する役割」が必要になりました。
各部署がバラバラに動いてしまうと、重複や漏れが生じてしまうからです。
そこで、全体を統括する「主幹」という役割が確立されました。
🟢 主管が必要になった背景
一方、業務が専門化・細分化されるにつれて、「この業務は誰が責任を持つのか」を明確にする必要が出てきました。
責任の所在が曖昧だと、トラブルが起きたときに対応が遅れてしまいます。
そこで、特定業務の責任者として「主管」という概念が定着しました。
現代での使い分け
現代では、主幹は役職名として使われることが多く、主管は業務の担当関係を示す言葉として使われることが多くなっています。
たとえば「主幹教諭」は役職ですが、「主管部署」は担当関係を示しています。
公務員の知人によると、「主幹という役職は明確に定義されているけど、主管は『この業務を担当する』という意味で柔軟に使われている」とのこと。
この違いを理解しておくと、実務での使い分けがスムーズになります。
役職としての主幹と主管
主幹と主管について「役職なのはどっち?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
結論から言えば、主幹は役職として使われることが多く、主管は役職ではなく業務の担当関係を示す言葉として使われるのが一般的です。
ただし、組織や業界によって使い方が異なる場合もあります。
ここでは、主幹と主管の役職としての位置づけ、公務員と民間企業での使われ方をそれぞれ解説します。
主幹と主管、役職なのはどっち?
「主幹」と「主管」では、主幹が役職として使われることが圧倒的に多いです。
🔵 主幹は役職
主幹は、組織の中で明確な役職として定義されています。
名刺や辞令に「主幹」と記載され、給与や権限も役職に応じて設定されます。
主幹が役職として使われる例:
- 主幹教諭(学校教育法で定められた役職)
- 編集主幹(出版社の役職)
- 主幹研究員(研究機関の役職)
- 主幹技師(技術系組織の役職)
🟢 主管は役職ではない
一方、主管は役職名としてはほとんど使われません。「主管部署」「主管事業」のように、業務の担当や責任の所在を示す言葉として使われます。
主管が使われる例:
- 「人事部が主管する研修制度」→ 人事部が担当・管理する
- 「主管部署が資料を作成する」→ 担当部署が作成する
- 「主管者として責任を持つ」→ 担当責任者として
例外的なケース
ただし、一部の企業や中国系企業では「主管」が役職名として使われることもあります。
中国語では「主管(zhǔguǎn)」は「マネージャー」に近い役職を指します。
日系企業に勤める友人が、「取引先の中国企業の名刺に『営業主管』と書かれていて、日本の課長クラスだった」と話していました。
見分け方のポイント:
- 名刺や辞令に単独で記載される → 主幹(役職)
- 「○○を主管する」と動詞的に使われる → 主管(業務担当)
公務員における主幹と主管の位置づけ
公務員の世界では、主幹と主管の使い分けが特に明確です。
🏛️ 地方公務員の役職階層
一般的な地方公務員の役職階層は以下のようになっています:
階層 | 役職名 | 位置づけ |
---|---|---|
上位 | 部長・次長 | 部全体の統括 |
中位 | 主幹・課長 | 課の統括・横断的調整 |
下位 | 主査・係長 | 係や特定業務の管理 |
一般 | 主任・一般職員 | 実務担当 |
主幹の役割(公務員):
- 課長級または課長補佐級の役職
- 複数の係をまたぐ事業の統括
- 専門性が高い分野の責任者
- 部署間の調整や政策立案
主管の使われ方(公務員):
- 役職ではなく、業務の担当を示す
- 「主管課」「主管部署」という形で使用
- どの部署が責任を持つかを明示
具体例: 市役所の環境イベントを開催する場合
- 主幹:環境政策課の主幹が全体統括
- 主管:環境政策課が主管部署として運営を担当
- 広報課・清掃課などが協力部署として参加
地方公務員の知人によると、「主幹に昇進すると給与も上がるし、責任も重くなる。主管はあくまで『うちの課が担当です』という意味だから、役職とは全然違う」とのことでした。
民間企業での使われ方
民間企業では、公務員ほど厳密な使い分けがされていないケースも多いですが、基本的な考え方は同じです。
📊 民間企業での主幹
民間企業で「主幹」を役職として使う例:
- 編集主幹(出版社・新聞社)
- 主幹研究員(研究開発部門)
- プロジェクト主幹(大型プロジェクトの統括者)
ただし、一般的な製造業やサービス業では、「部長」「課長」「マネージャー」などの役職名を使うことが多く、「主幹」という役職名はあまり見られません。
📊 民間企業での主管
民間企業では、主管は以下のような形で使われます:
- 「営業部が主管する新商品キャンペーン」
- 「主管部門として予算を管理する」
- 「主管会社として事業を統括する」
特に、複数の会社が関わる共同事業では「主管会社」という表現がよく使われます。
業界による違い:
業界 | 主幹の使用頻度 | 主管の使用頻度 |
---|---|---|
出版・メディア | ◎(編集主幹など) | ○ |
公共事業・建設 | △ | ◎(主管会社など) |
製造業 | △ | ○ |
IT・ベンチャー | ✕ | △ |
教育機関 | ◎(主幹教諭など) | ○ |
大手メーカーに勤める同僚は、「うちの会社では主幹という役職はないけど、社外との共同プロジェクトでは『当社が主管します』という表現をよく使う」と話していました。
一方、出版社勤務の友人は、「編集主幹は役職としてしっかり定義されていて、編集方針を決める重要なポスト」とのことでした。
【ここがポイント!】
✓ 主幹 = 役職として使われることが多い(名刺や辞令に記載)
✓ 主管 = 業務の担当関係を示す言葉(役職ではない)
✓ 「主幹教諭」は役職、「主管部署」は担当部署
「主幹」と「主管」の使い分け方【具体例で理解】
主幹と主管の違いは理解できても、実際の場面でどう使い分ければいいのか迷う方も多いでしょう。
ここでは、企業のプロジェクト、行政機関、教育現場という3つの具体的なシーンを取り上げて、主幹と主管がどのように使い分けられているのかを詳しく見ていきます。
実例を通して理解することで、自分の仕事や組織での使い方がより明確になります。
ここでは、企業のプロジェクトでの使い分け、行政機関での使い分け、教育現場での使い分けを解説します。
企業のプロジェクトでの使い分け
企業で新規プロジェクトを立ち上げる際、主幹と主管は以下のように使い分けられます。
【具体例】新商品開発プロジェクトの場合
ある食品メーカーが新しい健康飲料を開発・販売するプロジェクトを想定してみましょう。
🔵 主幹の役割
- プロジェクト主幹:部長クラスが就任
- 商品開発部・営業部・マーケティング部・製造部など複数部署を統括
- 全体スケジュールの管理と意思決定
- 予算配分や人員調整などの全体調整
- 経営陣への報告と承認取得
🟢 主管の役割
- 商品開発は商品開発部が主管:レシピ開発、試作、品質管理
- 広告キャンペーンは営業部が主管:販売戦略、プロモーション企画
- 製造ラインは製造部が主管:生産体制の構築、品質チェック
わかりやすい図式:
↓ 調整・指示
├─ 商品開発部(主管:商品開発)
├─ 営業部(主管:販売・プロモーション)
└─ 製造部(主管:生産体制)
IT企業に勤める友人の話では、「大型システム開発プロジェクトで、プロジェクト主幹が全体を見て、設計は設計チームが主管、開発は開発チームが主管という形で分担した。
主幹が週次で各主管チームの進捗を確認して調整していた」とのこと。
このように、主幹が全体の舵取りをし、各主管が実務を進めるという関係性が見えてきます。
行政機関での使い分け
行政機関では、主幹と主管の使い分けが特に明確で、公文書にもはっきりと記載されます。
【具体例】市民向けイベントの開催
市制100周年記念イベントを市役所が開催する場合を見てみましょう。
🏛️ 行政での使い分け
役割 | 担当 | 具体的な業務 |
---|---|---|
主幹 | 企画課の主幹(役職) | 全体企画・各課の調整・予算管理・意思決定 |
主管 | 企画課(主管部署) | イベント全体の運営責任 |
協力 | 広報課 | 広報活動・プレスリリース |
協力 | 市民課 | 受付・案内業務 |
協力 | 総務課 | 会場手配・備品準備 |
実際の決裁文書の例:
- 「本事業は企画課が主管し、広報課、市民課、総務課の協力を得て実施する」
- 「企画課主幹○○が全体統括を行う」
市役所勤務の知人によると、「主管部署になると、その事業の成否に責任を持つことになるから、部署内でも『今回はうちが主管だから気合い入れていこう』という雰囲気になる。
主幹は役職だから、その人の判断で物事が決まる」と話していました。
補助金申請での使い分け
国や県からの補助金申請書類でも、主管の概念が使われます。
- 「○○市を主管自治体として、周辺3市と共同で事業を実施する」
- 「主管自治体が予算を管理し、各自治体に配分する」
このように、行政では「どこが責任を持つのか」を明確にするために、主管という言葉が頻繁に使われます。
教育現場での使い分け
教育現場、特に学校では、主幹教諭という役職が法律で定められており、明確に使い分けられています。
【具体例】学校の文化祭準備
中学校で文化祭を開催する場合の役割分担を見てみましょう。
🏫 学校での使い分け
🔵 主幹教諭の役割
- 学校教育法で定められた役職(副校長と教頭に次ぐ立場)
- 文化祭全体の企画・調整
- 各学年・各委員会の活動を統括
- 校長・教頭への報告と意思決定のサポート
- 予算管理や外部との調整
🟢 各担当の主管業務
- 生徒会が主管:生徒主体の企画運営
- 各学年が主管:クラス出し物の管理
- 美術部が主管:装飾や看板制作
- PTA が主管:保護者向けの出店や受付
主幹教諭の具体的な仕事:
- 文化祭実行委員会の統括
- 各学年主任との調整会議の主催
- スケジュール全体の管理
- トラブル発生時の判断と対応
教員をしている友人に聞いたところ、「主幹教諭は校長・教頭に次ぐ役職だから、学校運営の重要な判断に関わる。文化祭のような大きな行事では、主幹教諭が全体を見て、各学年や委員会が主管して動く。主管という言葉は使わないこともあるけど、『○年生が担当する』『生徒会が中心になる』というのが実質的な主管の意味」とのことでした。
部活動での使い分け
- 部活動全体を統括する主幹教諭
- 各部活動を主管する顧問教員
このように、教育現場でも「全体統括」と「個別担当」という役割分担がはっきりしています。
混同しやすい類似語との違い
主幹と主管以外にも、似たような言葉がいくつか存在します。
「主査」「所管」「主催」などは、音や漢字が似ているため混同しやすい言葉です。
しかし、それぞれ意味や使われる場面が異なります。
これらの違いを理解しておくことで、ビジネス文書や公的な場面で適切な言葉を選べるようになります。
ここでは、主幹と主査の違い、主管と所管の違い、主管と主催の違いを解説します。
主幹と主査の違い
「主幹」と「主査」は、どちらも役職として使われる言葉ですが、位置づけや役割が異なります。
🔵 主幹(しゅかん)
- 位置づけ:課長級または課長補佐級の役職
- 役割:複数の業務や部署を横断的に統括する
- 責任範囲:広範囲・全体的
🟢 主査(しゅさ)
- 位置づけ:係長級の役職
- 役割:特定の業務や案件を担当・調査する
- 責任範囲:限定的・個別業務
一般的な役職階層:
↓
課長・主幹(同程度)
↓
主査・係長(同程度)
↓
主任・一般職員
使い分けの例:
- 「プロジェクト主幹が全体を統括し、主査が個別タスクを担当する」
- 「主幹は部署間の調整を行い、主査は実務レベルの調査・分析を行う」
公務員の友人によると、「主査に昇格したときは係長と同じ扱いになったけど、主幹に昇格した先輩は課長クラスの給与になって責任も一気に重くなった。
主査は『この件を調べて』という感じだけど、主幹は『全体をまとめて』という役割」とのこと。
「査」の意味に注目
「査」という漢字には「調べる」「審査する」という意味があります。
そのため主査は、特定の案件や業務を詳しく調べ、審査する役割を担うことが多いのです。
一方、主幹の「幹」は「中心・全体を支える」という意味なので、そこからも役割の違いが見えてきます。
主管と所管の違い
「主管」と「所管」は、どちらも「管理・担当する」という意味を持ちますが、使われる場面やニュアンスが異なります。
🟢 主管(しゅかん)
- 意味:主体的に管理・運営すること
- 使用場面:企業・行政どちらでも使用
- ニュアンス:積極的に責任を持って管理する
🟡 所管(しょかん)
- 意味:管轄すること・担当する範囲
- 使用場面:主に官公庁や行政で使用
- ニュアンス:管轄範囲や権限を示す
具体的な使い分け:
表現 | 主管 | 所管 |
---|---|---|
部署を示す | 主管部署 | 所管部署 |
大臣との関係 | (使わない) | ○○省所管の法人 |
事業について | 主管する事業 | 所管する業務 |
能動性 | 強い(主体的) | やや弱い(管轄) |
使用例の比較:
- 主管:「人事部が主管する社員研修を実施する」→ 人事部が責任を持って運営
- 所管:「文部科学省の所管する独立行政法人」→ 文科省の管轄下にある
実務での違い
行政文書では「所管」が多く使われます。
たとえば「厚生労働省所管の社会福祉法人」という表現は、その法人が厚労省の管轄・監督下にあることを示しています。
市役所勤務の知人の話では、「国からの通知文書には『各省庁の所管事項』という表現がよく出てくる。これは管轄範囲を示している。でも、実際に事業を進めるときは『うちの課が主管します』と言う。所管は静的な管轄範囲、主管は動的な運営責任という感じ」とのことでした。
主管と主催の違い
「主管」と「主催」は、イベントや事業で使われることが多い言葉ですが、役割が明確に異なります。
🟢 主管(しゅかん)
- 意味:実務的な運営・管理を担当すること
- 役割:実際の準備・運営・実行
- 責任:運営面での責任
🔴 主催(しゅさい)
- 意味:企画の発案者・開催責任者
- 役割:企画立案・資金提供・全体責任
- 責任:イベント全体の成否に対する責任
イベントでの役割分担の例:
【例】地域の音楽フェスティバル
立場 | 組織 | 役割 |
---|---|---|
主催 | 市・市教育委員会 | 企画・予算確保・全体責任 |
主管 | 市文化振興財団 | 実際の運営・会場手配・受付・進行管理 |
協賛 | 地元企業 | 資金・物品提供 |
後援 | 県・メディア | 名義後援・広報協力 |
わかりやすい表現:
- 主催:「このイベントは誰のものか」「誰がお金を出したか」
- 主管:「誰が実際に動いて準備・運営するか」
実例での違い
オリンピックを例にすると:
- 主催:国際オリンピック委員会(IOC)
- 主管:開催都市の組織委員会
- IOCが大会全体の責任を持ち、組織委員会が実際の運営を担当
イベント会社に勤める友人の話では、「クライアント企業が主催で、うちの会社が主管という形が多い。主催者はお金を出して企画の方向性を決めるけど、実際の会場設営、進行、トラブル対応は全部うちが主管としてやる。主催者は当日VIP席で見てるだけ、なんてこともある」とのこと。
名刺交換での注意点
イベント関係者と名刺交換すると、「主催:○○株式会社、主管:△△イベント企画」のように併記されていることがあります。
これは役割分担を明示するためです。
「主幹」・「主管」を間違えないためのポイント
主幹と主管の違いを理解しても、実際の場面で「どちらを使えばいいのか」迷うことがあります。
特に、書類作成や会議での発言では、間違った使い方をすると誤解を招く可能性もあります。
しかし、いくつかのポイントを押さえておけば、自信を持って使い分けることができます。
ここでは、迷ったときの判断基準、業界・組織による使い方の違い、文脈から正しく読み取る方法を解説します。
迷ったときの判断基準
主幹と主管のどちらを使うべきか迷ったときは、以下の3つの質問を自分に投げかけてみましょう。
❓ 判断基準1:
役職として使うのか?
- YES → 主幹を使う
- NO → 主管を使う
例:
- 「彼は○○という役職に就いている」→ 「主幹」
- 「この部署が○○を担当している」→ 「主管する」
❓ 判断基準2:
全体を統括するのか、特定業務を管理するのか?
- 全体統括 → 主幹
- 特定業務 → 主管
例:
- 「プロジェクト全体をまとめる人」→ 「主幹」
- 「広報活動を担当する部署」→ 「主管部署」
❓ 判断基準3:
単独で使えるか、「する」をつけて使うか?
- 単独で名詞として使う → 主幹(主幹教諭、編集主幹)
- 「主管する」と動詞的に使う → 主管
簡単なチェックリスト:
□ 名刺に印刷する → 主幹
□ 組織図に記載する → 主幹
□ 「○○が担当します」という意味 → 主管
□ 「○○部署」という形で使う → 主管部署
□ 全体調整が役割 → 主幹
□ 実務運営が役割 → 主管
会社員の同僚が、「資料作成で『主管部署が対応します』と書くべきところを『主幹が対応します』と書いて上司に修正された。主幹は人、主管は業務の担当関係って覚えたら間違えなくなった」と話していました。
迷ったときの最終手段
それでも迷ったら、「担当」という言葉に置き換えてみましょう。
意味が通れば「主管」、通らなければ「主幹」です。
- 「営業部が主管する」→「営業部が担当する」→ ✅ 意味が通る
- 「営業部の主幹」→「営業部の担当」→ ✗ 意味が通らない(役職だから)
業界・組織による使い方の違い
主幹と主管の使い方は、業界や組織によって慣習が異なる場合があります。
自分の所属する業界の使い方を理解しておくことが大切です。
📊 業界別の使い方一覧
業界・組織 | 主幹の使い方 | 主管の使い方 |
---|---|---|
地方公務員 | 役職として頻繁に使用(主幹級職員) | 主管部署・主管課として頻繁に使用 |
国家公務員 | あまり使われない | 主管省庁・主管部局として使用 |
教育機関 | 主幹教諭(法定役職) | あまり使われない |
出版・メディア | 編集主幹(重要役職) | たまに使用 |
建設・公共事業 | あまり使われない | 主管会社・主管業者として頻繁に使用 |
IT・ベンチャー | ほとんど使われない | たまに使用 |
製造業 | あまり使われない | 主管部門として使用 |
金融機関 | 主幹事(証券会社) | あまり使われない |
地域による違い
同じ公務員でも、地域によって使い方が異なることがあります。
- 東京都:主幹という役職が明確に定義されている
- 一部の県:主幹という役職を使わず、「課長補佐」「副課長」を使用
組織規模による違い
- 大企業・大規模組織:役職が細分化され、主幹という役職を設置することが多い
- 中小企業:シンプルな役職体系で、主幹という役職は設けないことが多い
転職経験のある知人の話では、「前の会社(大手)では主幹という役職があったけど、今の会社(中小)では課長と一般社員の2層しかない。主管という言葉も使わず、『担当部署』と言っている」とのこと。
国際的な違い
中国系企業では「主管(zhǔguǎn)」が役職名として使われます。
日本企業と取引する際は、文脈から判断する必要があります。
文脈から正しく読み取る方法
文章や会話の中で主幹・主管が出てきたとき、文脈から正しく意味を読み取るスキルも重要です。
📖 文脈読解のコツ
コツ1:前後の言葉に注目する
主幹・主管の前後にどんな言葉があるかで判断できます。
パターン | 判断 | 例 |
---|---|---|
「○○主幹」(役職名) | 主幹(人) | 編集主幹、主幹教諭 |
「主幹が~する」 | 主幹(人) | 主幹が調整する |
「主管する」 | 主管(業務) | 人事部が主管する |
「主管部署」「主管事業」 | 主管(業務) | 主管部署として対応する |
コツ2:動詞として使われているか確認する
- 「主管する」「主管している」→ 業務の担当を示す
- 「主幹が行う」「主幹に任せる」→ 人(役職)を示す
コツ3:文章全体のトーンを読む
公的な文書や行政文書では、主管という言葉が頻繁に使われます。
例文で練習:
例文1:「本事業は企画課が主管し、主幹が全体を統括する。」
- 「企画課が主管」→ 企画課が担当・運営
- 「主幹が統括」→ 主幹という役職の人が統括
例文2:「主管部署である総務部の主幹から説明があった。」
- 「主管部署」→ 担当部署
- 「総務部の主幹」→ 総務部の役職者
例文3:「主幹事会社として当社が主管する。」
- 「主幹事会社」→ メインの幹事会社(金融用語)
- 「当社が主管する」→ 当社が実務を担当する
市役所で働く知人によると、「行政文書を読むときは、『誰が責任を持つか』と『誰がやるか』を意識すると理解しやすい。主幹は『誰が(役職)』、主管は『誰がやるか(担当)』だと思えば間違えない」とのことでした。
実践的なアドバイス
初めて見る文書で主幹・主管が出てきたら:
- まず役職として使われているか確認
- 次に「する」がついているか確認
- 最後に全体の文脈から判断
これを繰り返すことで、自然と使い分けができるようになります。
【ここがポイント!】
✓ 単独で名詞として使う → 主幹(編集主幹、主幹教諭)
✓ 「○○が主管する」と動詞的に使う → 主管
✓ 迷ったら「担当」に置き換えてみる(意味が通れば主管)
「主幹」・「主管」に関する質問
ここまで主幹と主管の違いや使い分け方を解説してきましたが、まだ細かい疑問が残っている方もいるでしょう。
読者からよく寄せられる質問に一問一答形式で答えていきます。
実務で役立つ内容ばかりなので、ぜひ参考にしてください。
主幹と主管はどちらが偉いですか?
A:主幹と主管は比較できません。
主幹は「役職」、主管は「業務の担当関係」を示す言葉だからです。
主幹は人の役職なので、組織内での地位や権限があります。
一方、主管は「どの部署が担当するか」を示す言葉で、偉い・偉くないという概念はありません。
わかりやすい例え:
- 主幹 = 「部長」「課長」などの役職(人の立場)
- 主管 = 「担当部署」「責任部署」(業務の所在)
ただし、「主幹という役職の人」と「主管業務を担当する一般職員」を比較すれば、役職のある主幹の方が組織内での地位は上です。
具体例: プロジェクトで「主幹が全体を統括し、営業部が主管する」という場合:
- 主幹(役職)→ 課長級の地位
- 営業部が主管(担当)→ 営業部の誰かが実務を行う
この場合、役職としての主幹の方が地位は上ですが、「主幹と主管のどちらが偉いか」という質問自体が成り立たないことがわかります。
会社員の友人が、「新入社員のとき『主管部署って偉いんですか?』って先輩に聞いて笑われた。主管は偉さじゃなくて担当の意味だって教わった」と話していました。
ポイント:
- 主幹 = 役職(地位がある)
- 主管 = 担当(地位ではない)
- 両者は比較対象ではない
主幹教諭と主管教諭の違いは?
A:主幹教諭は学校教育法で定められた正式な役職ですが、主管教諭という役職は存在しません。
「主幹教諭」は2007年の学校教育法改正で新設された役職で、副校長・教頭に次ぐ管理職です。
一方、「主管教諭」という言葉は法律上も実務上も使われていません。
主幹教諭の役割:
- 校長・副校長・教頭を補佐する
- 校務の一部を取りまとめる(教務主任、生徒指導主事など)
- 複数の分掌業務を統括する
- 若手教員の指導・育成
学校での「主管」の使われ方:
教育現場で「主管」という言葉を使う場合は、「担当する」という意味で使われます。
例:
- 「体育祭は体育科が主管する」→ 体育科が担当・運営する
- 「生徒会が主管する文化祭」→ 生徒会が中心となって運営する
ただし、これも「主管教諭」という役職名ではなく、「体育科の教諭が主管として担当する」という意味です。
役職の階層:
校長
↓
副校長
↓
教頭
↓
主幹教諭(ここが新設された役職)
↓
教諭・講師
教員をしている知人によると、「主幹教諭は管理職手当がつく役職で、責任も重い。主管教諭という言葉は聞いたことがない。もし使うとしたら『○○を主管する教諭』という意味になるけど、普通は『担当教諭』と言う」とのことでした。
名刺に書くときの注意点は?
A:主幹は役職なので名刺に記載できますが、主管は役職ではないため単独では記載しません。
名刺に記載する際の基本ルールを押さえておきましょう。
✅ 主幹を名刺に記載する場合
主幹は役職なので、名刺に以下のように記載します:
記載例1:
- 株式会社○○
- 営業部 主幹
- 山田太郎
記載例2:
- ○○市役所 企画課
- 主幹
- 佐藤花子
編集主幹など特殊な役職の場合:
- ○○出版社
- 編集主幹
- 田中一郎
❌ 主管は名刺に記載しない
主管は業務の担当関係を示す言葉なので、名刺に「主管」とだけ書くことはありません。
NG例:
- 株式会社○○
- 営業部 主管 ← これは意味不明
- 山田太郎
正しい記載例:
もし主管業務を強調したい場合は、説明として以下のように記載します:
- 株式会社○○
- 営業部 課長
- 山田太郎
- ※新商品プロジェクト主管担当
国際的な場面での注意:
英語の名刺では、主幹を「Senior Manager」「Chief~」などと訳すのが一般的です(詳しくは次の質問で解説)。
広告代理店勤務の友人が、「クライアントから『主管会社の担当者の名刺がほしい』と言われたとき、普通の名刺を渡して『弊社が主管として対応します』と口頭で説明した。主管は名刺の役職欄には書かない」と話していました。
名刺作成のチェックポイント:
☑ 主幹は役職として記載OK
☑ 主管は役職欄には書かない
☑ 主管業務を示したい場合は補足説明として記載
☑ 中国系企業の名刺で「主管」がある場合は役職の可能性あり
英語ではどう表現しますか?
A:主幹と主管は文脈によって異なる英語表現を使い分ける必要があります。
英語には主幹・主管に完全に対応する単語がないため、役割や文脈に応じて適切な表現を選びます。
🔵 主幹の英語表現
主幹は役職なので、その役割に応じた英語役職名を使います:
日本語 | 英語表現 | 使用場面 |
---|---|---|
主幹 | Senior Manager | 一般企業の課長級役職 |
主幹 | Chief Coordinator | 調整役としての主幹 |
編集主幹 | Editor-in-Chief / Chief Editor | 出版・メディア業界 |
主幹研究員 | Senior Researcher / Principal Researcher | 研究機関 |
主幹教諭 | Senior Teacher / Lead Teacher | 教育機関 |
例文:
- He serves as a Senior Manager coordinating multiple departments.
- (彼は複数の部署を調整する主幹を務めている)
🟢 主管の英語表現
主管は「担当する」という意味なので、動詞や説明的な表現を使います:
日本語 | 英語表現 |
---|---|
主管する | be in charge of / be responsible for |
主管部署 | department in charge / responsible department |
主管会社 | lead company / primary contractor |
主管事業 | projects under one's jurisdiction |
例文:
- The Marketing Department is in charge of this campaign.
- (マーケティング部がこのキャンペーンを主管している)
- Our company serves as the primary contractor for this project.
- (当社がこのプロジェクトの主管会社です)
ビジネスメールでの使い方:
- We are the lead company responsible for managing this event.
- (当社が本イベントを主管する主管会社です)
- Mr. Tanaka, Senior Manager of the Planning Department, will coordinate the overall project.
- (企画部の田中主幹がプロジェクト全体を統括します)
外資系企業で働く知人によると、「海外のクライアントに『主管』を説明するとき、"We are the main company responsible for execution"(実行責任を持つメイン企業)と言うとわかってもらえる。主幹は役職だから名刺に英語役職を書いておけば問題ない」とのことでした。
主観(しゅかん)とは違う言葉ですか?
A:はい、まったく違う言葉です。
主観は「個人的な見方・考え方」を意味し、主幹・主管とは意味も使い方も異なります。
「しゅかん」という読み方が同じため混同されることがありますが、意味は全く違います。
📚 3つの「しゅかん」の違い
言葉 | 読み | 意味 | 対義語・関連語 |
---|---|---|---|
主観 | しゅかん | 個人的な見方・考え方 | 客観 |
主幹 | しゅかん | 全体を統括する役職・役割 | (対義語なし) |
主管 | しゅかん | 主体的に管理・担当すること | (対義語なし) |
使い分けの例:
- 主観:「これは私の主観ですが、この商品は売れると思います」
- 主幹:「プロジェクト主幹として全体を統括します」
- 主管:「営業部が主管する新規事業です」
主観の使い方:
主観は哲学や心理学の用語でもあり、個人の内面的な視点を指します。
よくある間違い:
- ❌「このプロジェクトは私の主観で進めます」→ 意味不明(主観は役職ではない)
- ✅「このプロジェクトは私が主管して進めます」→ 正しい(私が担当して進める)
- ✅「このプロジェクトは私の主観では成功すると思います」→ 正しい(私の個人的見解では)
変換ミスに注意:
パソコンやスマホで「しゅかん」と入力すると、主観・主幹・主管・守漢など複数の候補が出ます。
変換ミスには注意しましょう。
会社の後輩が、「報告書で『主観部署が対応します』と書いて上司に『個人的な見方の部署って何?』と突っ込まれた。変換ミスで主管のつもりだったのに恥ずかしかった」と話していました。
覚え方のコツ:
- 主観:「観」は「見る」→ 個人の見方
- 主幹:「幹」は「木の幹」→ 中心となる人
- 主管:「管」は「管理」→ 担当・管理
この違いを意識すれば、間違えることはありません。
まとめ
「主幹」と「主管」は、どちらも「しゅかん」と読みますが、意味や使い方は大きく異なります。
主幹は全体を統括する役職を指し、主管は特定業務を担当する関係を示します。
主幹は名刺や辞令に記載される役職名として使われるのに対し、主管は「○○部が主管する」のように動詞的に使われることがほとんどです。
迷ったときは、「単独で名詞として使えるか」「担当という言葉に置き換えられるか」を考えると判断しやすくなります。
組織や業界によって使い方に違いはありますが、基本的な考え方を押さえておけば、ビジネスシーンや公的な場面で自信を持って使い分けることができるでしょう。