
「大学」と「大学校」、名前は似ているけれど、実は全く違う教育機関だということをご存知ですか?
高校生やその保護者の中には、「大学校って専門学校のこと?」「どっちの方が上なの?」「大学校を出ても大卒になるの?」といった疑問を持つ方が多くいらっしゃいます。


実は、大学と大学校では、法律上の位置づけ、教育目的、学費、取得できる学位、卒業後の進路など、あらゆる面で大きな違いがあります。
特に、防衛大学校や気象大学校のような省庁大学校は、給与をもらいながら学べる一方で、卒業後の勤務義務があるなど、一般の大学とは全く異なる仕組みになっています。
この記事では、大学と大学校の違いを基礎から丁寧に解説し、どちらを選ぶべきかの判断基準や、実際に大学校を選んだ人の体験談まで詳しくご紹介します。
あなたの進路選択に役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までご覧ください。
「大学」と「大学校」の違いとは?基本をわかりやすく解説
「大学」と「大学校」は名前が似ていますが、実は根本的に異なる教育機関です。
大学は多くの人が通う一般的な高等教育機関ですが、大学校は国の機関が運営する特別な教育施設という位置づけになります。
どちらも高校卒業後に進学する選択肢ですが、法律上の扱いや教育目的、取得できる資格などに大きな違いがあります。
ここでは、両者の基本的な違いをわかりやすく解説します。
「大学」と「大学校」の定義
大学は、学校教育法に基づいて設置される高等教育機関です。
学校教育法⇒こちら
文部科学省が認可し、学術研究と教育を行う場として位置づけられています。
国立・公立・私立を問わず、全国に800校以上存在し、多様な学部・学科で幅広い学問を学べます。
一方、大学校は学校教育法に基づかない教育機関で、各省庁が特定の目的のために設置しています。
例えば、防衛省の防衛大学校、国土交通省の気象大学校、海上保安庁の海上保安大学校などがあります。
これらは国家公務員や専門職員を養成するための施設という性格が強く、一般の大学とは設立の背景が全く異なります。
名前に「大学」とついていても、大学校は法律上「大学」ではありません。
ただし、教育内容のレベルは大学と同等かそれ以上の場合も多く、特定分野の専門知識を深く学べる環境が整っています。
知人の息子さんが防衛大学校に進学した際、「大学じゃないの?」と驚いていた親御さんがいましたが、実際には国の機関で学ぶ特別なルートだと知って納得していました。
法的な位置づけの違い(学校教育法による区分)
法律上の違いは、両者を分ける最も重要なポイントです。
大学は学校教育法第1条に定められた「学校」に該当し、いわゆる「一条校」と呼ばれます。
この法律に基づいて設置されるため、文部科学省の管轄下にあり、厳格な基準を満たす必要があります。
大学校は学校教育法に基づかない「省庁大学校」や「職業訓練施設」として分類されます。
そのため、文部科学省ではなく、防衛省・国土交通省・厚生労働省など、各省庁が独自に運営しています。
法律上は「各種学校」や「職業能力開発施設」に近い扱いになることもあります。
この違いにより、大学校は学校教育法上の「大学」ではないため、本来であれば学位授与の権限がありません。
しかし、実際には多くの大学校が独立行政法人大学改革支援・学位授与機構を通じて学位を取得できる仕組みを持っています。
会社の同僚が気象大学校出身で、「法律上は大学じゃないけど、学位はちゃんと取れたよ」と話していたのが印象的でした。
学位(学士)が取れるかどうか
大学を卒業すると、自動的に「学士」の学位が授与されます。
これは大学が学位授与権を持っているためで、文学部なら「学士(文学)」、工学部なら「学士(工学)」といった形で専攻分野に応じた学位が得られます。
この学位は国際的にも認められており、就職や大学院進学の際に公式な学歴として使えます。
大学校の場合は少し複雑です。
大学校自体には学位授与権がないため、卒業しただけでは「学士」にはなりません。
しかし、防衛大学校や気象大学校などの主要な大学校では、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に申請することで学士の学位を取得できます。
所定の単位を修得し、審査に合格すれば、大学卒業者と同じ「学士」の称号が得られる仕組みです。
ただし、すべての大学校で学位が取れるわけではありません。
職業訓練に特化した大学校や、短期課程の大学校では学位が取得できない場合もあります。
そのため、進学を検討する際は、その大学校が学位授与機構と連携しているか確認することが重要です。
友人が職業能力開発大学校に進んだ際、「技術は身についたけど学位はないから、大卒扱いにはならないんだ」と説明していたのを思い出します。
「大学」と「大学校」の仕組みと目的の違い
大学と大学校は、教育の仕組みや設立された目的が大きく異なります。
大学は幅広い学問を追求し、社会に貢献する人材を育成することを目指していますが、大学校は特定の職業や国の業務に直結した専門教育を行うことが主な目的です。
入学方法や学習内容、卒業後の進路も両者で異なるため、進路選択の際には自分の目標に合った方を選ぶことが重要になります。
ここでは、両者の仕組みと目的の違いを詳しく解説します。
教育目的と設立目的
大学の設立目的は、学問の研究と教育を通じて、幅広い知識と教養を持った人材を社会に送り出すことです。
学術的な探究を重視し、文系・理系を問わず多様な分野の学びが用意されています。
学生は自分の興味や関心に応じて専攻を選び、4年間(医学部・薬学部などは6年間)かけてじっくり学びます。
卒業後の進路も、民間企業、公務員、大学院進学、起業など多岐にわたります。
大学校の設立目的は、国の特定業務を担う専門職員の養成です。
例えば、防衛大学校は自衛隊幹部候補生の育成、気象大学校は気象庁の職員養成、海上保安大学校は海上保安官の育成を目的としています。
教育内容は実務に直結しており、卒業後は基本的にその設置機関(省庁や関連組織)に就職することが前提となっています。
このように、大学が「学問の自由」を尊重した教育を行うのに対し、大学校は「即戦力となる専門人材の育成」に特化しています。
知人の娘さんが防衛大学校を志望した際、「将来自衛官になるつもりがないなら、普通の大学の方がいいよ」とアドバイスされたそうです。
大学校は明確なキャリアパスがある分、進路変更の自由度は低くなります。
入学条件・学習内容・卒業後の進路
入学条件について、大学は一般的な大学入学共通テストや各大学の個別試験を受験し、学力に応じて合否が決まります。
年齢制限は基本的になく、浪人生や社会人も受験可能です。
大学校の入学条件はより厳格です。
多くの大学校では年齢制限があり(例:防衛大学校は21歳未満)、身体検査や適性検査が課されることもあります。
防衛大学校や海上保安大学校では、入学と同時に国家公務員としての身分を得るため、公務員試験に準じた選考が行われます。
学習内容では、大学が一般教養から専門科目まで幅広く学ぶのに対し、大学校は実務に特化したカリキュラムが組まれています。
例えば、防衛大学校では軍事学や訓練が含まれ、気象大学校では気象観測や予報技術を実践的に学びます。
卒業後の進路も大きく異なります。
大学卒業生は自由に就職先を選べますが、大学校卒業生は基本的に設置機関への就職が義務付けられています。
防衛大学校を卒業すれば自衛隊幹部候補生、気象大学校なら気象庁職員という具合です。
会社の先輩が海上保安大学校出身で、「卒業後は必ず海上保安庁に入るから、進路に迷うことはなかったね」と話していました。
国立大学と国の機関としての大学校の違い
国立大学も大学校も国が関わっている点では共通していますが、運営形態と位置づけが全く異なります。
国立大学は、2004年の法人化以降、国立大学法人として運営されています。
国の予算で運営費交付金を受けていますが、経営は各大学法人に委ねられており、ある程度の自主性・独立性を持っています。
文部科学省の管轄下にあり、学問の自由と大学の自治が尊重されています。
学生は授業料を支払い、一般の学生として教育を受けます。
大学校は、各省庁が直接運営する「国の機関」です。
防衛省、国土交通省、厚生労働省などが設置し、職員養成のための施設として機能しています。
多くの大学校では、学生は入学と同時に国家公務員の身分を得て、給与(学生手当)が支給されます。
つまり、お金をもらいながら学べるという大きな特徴があります。
運営費も異なり、国立大学は授業料収入と国からの交付金で運営されますが、大学校は完全に国費で賄われます。
友人の息子さんが防衛大学校に合格したとき、「授業料がかからないどころか、給料までもらえるなんて」と親御さんが驚いていました。
ただし、その代わりに一定期間の勤務義務があるため、教育を受ける対価として国に奉仕する仕組みになっています。
「大学校」は「専門学校」とは違う?よくある誤解を解く
「大学校」という名前を聞いて、専門学校の一種だと誤解する人は少なくありません。
確かに、どちらも特定分野の専門教育を行う機関ですが、設置目的や運営主体、取得できる資格などが全く異なります。
特に、国が運営する省庁大学校と民間の専門学校では、教育内容や卒業後の扱いに大きな差があります。
大学校を正しく理解することで、進路選択の際に適切な判断ができるようになります。
ここでは、大学校と専門学校の違いと、実際の大学校の例を紹介します。
「大学校」と「専門学校」の違い
専門学校は、学校教育法に基づく「専修学校専門課程」として設置される教育機関です。
文部科学省が認可し、美容、看護、調理、IT、デザインなど多様な分野で職業教育を行います。
修業年限は2年が主流ですが、1年制から4年制まで幅広く存在します。卒業すると「専門士」(2年制以上)や「高度専門士」(4年制)の称号が得られ、専門的な技術や資格を身につけて就職するのが一般的です。
大学校は、主に国の省庁が設置する職業訓練・人材育成機関です。
学校教育法に基づかない場合が多く、特定の国家業務を担う人材を養成することを目的としています。
修業年限は4年が一般的で、大学と同等レベルの教育が行われます。
学位授与機構を通じて学士の学位が取得でき、卒業後は設置機関に就職するケースがほとんどです。
両者の大きな違いは、運営主体と目的にあります。
専門学校は民間や学校法人が運営し、幅広い職業分野への就職を目指しますが、大学校は国が直接運営し、特定の公務や専門職に就くことが前提となっています。
また、専門学校は授業料を払って通うのに対し、防衛大学校などの大学校では給与をもらいながら学べる点も特徴的です。
会社の後輩が「大学校って専門学校みたいなものでしょ?」と言っていましたが、実際には全く異なる制度です。
専門学校が民間の職業教育機関であるのに対し、省庁大学校は国家公務員養成のための国の機関という位置づけになります。
実際の例で見る大学校一覧(防衛・気象・海保など)
日本には様々な大学校が存在しますが、特に知名度が高く、明確な目的を持つ省庁大学校を紹介します。
防衛省関連
- 防衛大学校:自衛隊の幹部候補生を養成する4年制の大学校。
理工学、人文社会科学を学びながら、防衛学や訓練も行います。
学生は特別職国家公務員として給与が支給され、卒業後は陸上・海上・航空自衛隊の幹部自衛官となります。
防衛大学校⇒こちら - 防衛医科大学校:自衛隊の医師を養成する医学系大学校。
6年制で、卒業後は医師国家試験を受験し、自衛隊の医官として勤務します。
防衛医科大学校⇒こちら
国土交通省関連
- 気象大学校:気象庁の職員を養成する4年制の大学校。
気象学、物理学、情報科学などを学び、卒業後は気象庁で予報官や観測員として働きます。
入学時に国家公務員採用試験に合格する必要があります。
気象大学校⇒こちら - 海上保安大学校:海上保安官を養成する4年制の大学校。
航海、機関、情報通信などの専門教育に加え、船舶実習も行います。
卒業後は海上保安庁の幹部職員となります。
海上保安大学校⇒こちら
厚生労働省関連
- 職業能力開発大学校・職業能力開発短期大学校:
ものづくり分野の高度な技能・技術者を育成する施設。
機械、電気、建築などの専門技術を実践的に学べます。
一般企業への就職が主な進路となります。
職業能力開発総合大学校⇒こちら
職業能力開発短期大学校⇒こちら
これらの大学校に共通するのは、実務に直結した専門教育と明確なキャリアパスです。
知人が息子さんの進路相談で「海上保安大学校って何?」と尋ねてきたことがありましたが、説明すると「海上保安官になるための専門の学校なんだね。普通の大学とは全然違うんだ」と納得していました。
大学校は特定の職業を目指す人にとって、最短ルートとなる教育機関なのです。
「大学」と「大学校」どちらが上?選び方のポイント
「大学と大学校、どちらが上なの?」という質問をよく耳にしますが、実は優劣をつけることはできません。
それぞれ目的や役割が異なるため、どちらが良いかは個人の目標やキャリアプランによって変わります。
大学は幅広い学びと自由な進路選択ができる一方、大学校は特定分野の専門性と安定した就職先が保証されています。
自分が将来何をしたいのか、どんな働き方を望むのかを明確にすることが、最適な選択につながります。
ここでは、目的別の選び方と実際の体験談を紹介します。
目的別の選び方(就職・キャリア・学問)
安定した公務員キャリアを求める場合
大学校、特に防衛大学校や気象大学校などの省庁大学校が適しています。
入学と同時に国家公務員の身分を得られ、卒業後の就職先も確実に保証されています。
給与をもらいながら学べるため、経済的負担が少なく、卒業後すぐに専門職として働けるのが大きなメリットです。
ただし、一定期間の勤務義務があり、進路変更の自由度は低くなります。
幅広い選択肢と自由な進路を求める場合
一般の大学が向いています。
文系・理系問わず多様な学部から選べ、在学中に興味が変わっても専攻を変更したり、様々な業界への就職を目指したりできます。
大学院進学、留学、起業など、卒業後の選択肢も豊富です。
自分のペースで学び、将来を探りたい人には最適な環境です。
特定分野の専門性を深めたい場合
目指す職業が明確なら大学校、学問的探究を重視するなら大学の専門学部が良いでしょう。
例えば、気象予報士として気象庁で働きたいなら気象大学校、気象学を研究したいなら大学の理学部気象学科というように、目的に応じて使い分けることが重要です。
経済的な事情を考慮する場合
授業料の負担を避けたいなら、給与が支給される防衛大学校や気象大学校などの選択肢があります。
一方、国立大学も授業料が比較的安く、奨学金制度も充実しているため、経済的に進学しやすい環境が整っています。
友人の娘さんが進路に迷った際、「公務員として安定したいなら大学校、いろいろな可能性を探りたいなら大学」とアドバイスしたところ、自分の価値観を整理するきっかけになったそうです。
どちらが上ということはなく、自分の目標に合った道を選ぶことが最も重要です。
実際に大学校を選んだ人の体験談
体験談1:防衛大学校を選んだAさんのケース
高校時代から自衛隊に興味があったAさんは、防衛大学校への進学を決意しました。
「最初は親に反対されたけど、給料をもらいながら学べることや、卒業後の進路が保証されていることを説明したら納得してもらえた」と話します。
4年間は厳しい訓練と学業の両立が大変でしたが、同期との強い絆ができ、卒業後は陸上自衛隊の幹部自衛官として活躍しています。
「普通の大学生活とは違うけど、明確な目標があったから迷いなく進めた」とのことです。
体験談2:気象大学校を選んだBさんのケース
子どもの頃から天気に興味があったBさんは、大学の理学部と気象大学校で迷いました。
「最終的に、気象庁で実務に携わりたいという思いが強くて気象大学校を選んだ」そうです。
入学時の国家公務員試験は大変でしたが、少人数制で実践的な教育を受けられたことが良かったと振り返ります。
「同級生はみんな気象の道に進むから、モチベーションを保ちやすかった。ただ、民間企業への就職は基本的にできないので、その点は覚悟が必要」とアドバイスしています。
体験談3:一般大学を選んだCさんのケース
当初は海上保安大学校を考えていたCさんですが、「本当に海上保安官になりたいのか確信が持てなかった」ため、一般の国立大学に進学しました。
「大学で様々な分野を学ぶうちに、本当にやりたいことが見つかった。もし大学校に行っていたら、進路変更は難しかっただろうから、自分には大学が合っていた」と話します。
将来の選択肢を広く持ちたい人には、一般大学の自由度が魅力だったそうです。
これらの体験談から分かるのは、明確な目標がある人には大学校、幅広く学びたい人には大学が適しているということです。
どちらを選んでも、自分の決断に納得していることが何より大切だと言えるでしょう。
「大学」と「大学校」に関するよくある質問
大学と大学校について、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
学歴の扱いや進学・就職に関する実際的な質問に答えていきます。
進路選択の際に気になるポイントを解消し、自分に合った道を選ぶ参考にしてください。
ここでは、学位取得や大学院進学、学費、就職先、海外の状況など、具体的な疑問に答えていきます。
大学校を出ても「大学卒」になる?
結論から言うと、条件によって「大学卒」扱いになる場合とならない場合があります。
防衛大学校、気象大学校、海上保安大学校などの主要な省庁大学校では、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構を通じて学士の学位を取得できます。
所定の単位を修得し、審査に合格すれば「学士(工学)」「学士(理学)」などの学位が授与され、法律上も「大学卒」と同等の扱いになります。
就職や公務員試験の応募資格でも、「大学卒業程度」として認められるケースがほとんどです。
ただし、すべての大学校で学位が取れるわけではありません。
職業能力開発大学校の一部コースや、短期課程の大学校では学位が取得できない場合もあります。
その場合、学歴としては「○○大学校卒業」という扱いになり、法律上の「大学卒」にはなりません。
企業の採用においては、大学校卒業者を「大学卒」として扱うかどうかは企業によって異なります。
大手企業や公務員試験では学位の有無が重視されるため、学位を取得していれば問題ありません。
知人が防衛大学校卒業後に民間企業に転職した際、「学士号があったから、大卒として扱ってもらえた」と話していました。
進学を検討する際は、その大学校が学位授与機構と連携しているか必ず確認しましょう。
大学校の卒業後に大学院へ進学できる?
学士の学位を持っていれば、大学院への進学は可能です。
防衛大学校や気象大学校などで学位を取得した卒業生は、一般の大学卒業者と同様に大学院の入学資格を満たします。
実際に、防衛大学校から一般の大学院に進学するケースや、研究職を目指して修士課程・博士課程に進む人もいます。
ただし、勤務義務との兼ね合いが重要なポイントになります。
多くの省庁大学校では、卒業後に一定期間(通常5〜9年程度)の勤務義務が課せられます。
防衛大学校の場合、卒業後すぐに自衛隊に入隊し、幹部自衛官としての勤務が始まります。
その後、自衛隊内の制度を利用して大学院に進学するケースはありますが、民間の大学院に自由に進学できるわけではありません。
勤務義務を果たさずに退職する場合、在学中に支給された給与を返還しなければならないこともあります。
そのため、大学校入学時に「将来は大学院で研究したい」という明確な希望がある場合は、一般の大学を選ぶ方が無難です。
会社の先輩で気象大学校出身の方は、「気象庁で数年働いた後、気象研究所の大学院プログラムで修士号を取った」と話していました。
省庁内の制度を活用すれば、働きながら学位を取得する道もあるということです。
進路の自由度を重視するなら、事前に勤務義務の内容をしっかり確認することが大切です。
学費は大学と大学校で違う?
学費の仕組みは大学と大学校で大きく異なります。
一般の大学では、国立大学で年間約53万円、私立大学では文系で年間約80〜120万円、理系で年間約100〜150万円程度の授業料がかかります。
入学金も別途必要で、国立大学で約28万円、私立大学で約25〜30万円が相場です。
4年間の総額では、国立で約240万円、私立文系で約400万円、私立理系で約500万円以上が目安となります。
省庁大学校の多くは、授業料が無料です。
それどころか、防衛大学校、防衛医科大学校、気象大学校、海上保安大学校などでは、学生に給与(学生手当)が支給されます。
防衛大学校の場合、月額約11〜12万円程度の給与と年2回の賞与があり、さらに学生舎(寮)での食事・居住も無料です。
つまり、お金をもらいながら学べる環境が整っています。
ただし、職業能力開発大学校などでは授業料が必要になります。
年間約39万円程度で、一般の国立大学よりは安い設定ですが、完全無料ではありません。
この違いは、大学校が国家公務員養成機関であることに由来します。
給与が支給される代わりに、卒業後の勤務義務が課されるという仕組みです。
友人の息子さんが防衛大学校に合格したとき、「4年間で数百万円節約できる上に、給料までもらえるなんて」と驚いていましたが、「その代わり自衛官として働く義務がある」と理解して納得していました。
経済的負担を抑えたい場合、省庁大学校は非常に魅力的な選択肢と言えます。
大学校の卒業生の就職先は?
省庁大学校の卒業生は、基本的に設置機関への就職が義務付けられています。
これが一般の大学との最も大きな違いの一つです。
主な大学校の就職先
- 防衛大学校:陸上・海上・航空自衛隊の幹部自衛官(幹部候補生として入隊し、将来的には幹部自衛官として活躍)
- 防衛医科大学校:自衛隊の医官(医師として自衛隊病院などで勤務)
- 気象大学校:気象庁の予報官、観測員、気象研究所の研究員など
- 海上保安大学校:海上保安庁の幹部職員(巡視船の船長や航海士、海上保安部の管理職など)
- 職業能力開発大学校:一般企業の技術職(製造業、建設業などの技能・技術者)
省庁大学校の場合、卒業後はほぼ100%の就職率を誇ります。
就職活動をする必要がなく、卒業と同時に配属先が決まっているため、就職の不安がないのが大きなメリットです。
ただし、民間企業への就職は原則としてできず、勤務義務を果たさずに退職する場合は給与返還などのペナルティがあります。
一方、職業能力開発大学校の卒業生は一般企業に就職します。
製造業、建設業、IT業界などの技術職として活躍するケースが多く、高度な技能を身につけているため、就職率は高い傾向にあります。
会社の同僚に海上保安大学校出身の方がいますが、「卒業後は全員が海上保安官になる。進路に迷うことはないけど、逆に言えば他の選択肢はない」と話していました。
安定したキャリアが保証されている反面、自由度は低いという特徴があります。
将来のキャリアが明確な人にとっては理想的な環境と言えるでしょう。
海外にも大学校はある?
日本特有の「省庁大学校」システムは、海外ではあまり一般的ではありません。
ただし、類似した教育機関は世界各国に存在します。
アメリカでは、軍関係の教育機関として「ミリタリーアカデミー」があります。
例えば、ウェストポイント(陸軍士官学校)、アナポリス(海軍兵学校)、エアフォースアカデミー(空軍士官学校)などが有名です。
これらは日本の防衛大学校に相当し、卒業後は軍の士官として勤務します。
学費は無料で、給与も支給される点も共通しています。
イギリスにも、サンドハースト王立陸軍士官学校、ブリタニア王立海軍大学校などがあり、軍の幹部候補生を養成しています。
フランスでは、エコール・ポリテクニークなどのグランゼコール(大学校)が存在しますが、これは日本の「大学校」とは異なる概念です。
フランスのグランゼコールは、大学よりも難関とされるエリート教育機関で、一般的な「大学」とは別の高等教育システムとして確立しています。
日本の省庁大学校のように、特定省庁が直接運営し、職員養成を目的とする教育機関は、日本独自の制度と言えます。
海外では軍関係を除き、公務員は一般の大学を卒業後に採用試験を経て就職するのが主流です。
友人が留学先で「日本には気象庁専門の大学校があるんだ」と説明したら、「それは面白いシステムだね。アメリカでは普通の大学で気象学を学んで、卒業後に気象局に就職するのが一般的だよ」と言われたそうです。
日本の大学校システムは、効率的に専門人材を育成できる独特の制度として、海外からも注目されています。
まとめ
「大学」と「大学校」は名前が似ているため混同されがちですが、法的な位置づけ、教育目的、卒業後の進路など、多くの点で大きく異なる教育機関です。
大学は学校教育法に基づく高等教育機関で、幅広い学問を学び、自由に進路を選択できるのが特徴です。
一方、大学校は主に国の省庁が運営する専門人材育成機関で、特定の職業に就くことを前提とした実践的な教育が行われます。
防衛大学校や気象大学校などでは、給与をもらいながら学べる代わりに、卒業後の勤務義務が課されます。
どちらが上ということはなく、自分の将来の目標によって最適な選択は変わります。
明確なキャリアプランがあり、公務員として専門分野で活躍したいなら大学校が適しています。
一方、幅広く学びながら進路を探りたい、様々な業界への就職を考えたいという場合は、一般の大学が向いているでしょう。
重要なのは、それぞれの特徴を正しく理解し、自分の価値観や将来像に合った道を選ぶことです。
学費、学位取得の可否、勤務義務の有無など、具体的な条件をしっかり確認した上で、後悔のない進路選択をしてください。
あなたの目指す未来に最も近づける道が、あなたにとっての「正解」なのです。